生田斗真のこれまでのイメージを大きく覆し、日本映画界に新たな金字塔を打ち立てた『土竜の唄』シリーズ。「玲二を演じている時は無敵になれる。どんなにハードな撮影をしていても、アドレナリンが出まくっていて疲れを感じないんです」と公言する生田にとって、主人公・菊川玲二はこれ以上ないハマリ役となった。パート1から監督を務める三池崇史は言わずとしれた大ベテランだが、「『土竜の唄』シリーズは、自分にとっても非常に心地いい作品。監督は普通は型にはめていくのが仕事なんですが、この作品はパターンにはめなくていい、むしろ崩していくことが許される。すごく自由に楽しんでやれるシリーズです」と語る。生田、監督共に続編には当初より意欲的だったが、さらなる続編をやるには前作超えは必須。『土竜の唄 香港狂騒曲』で海外を舞台にし、壮大なスケールで大暴れした玲二を超えるのはなかなか容易なことではない。そんな中、続編を“FINAL”として映画を締めくくる形で行うならばどうかというアイディアのヒントを製作陣にくれたのは、他でもない原作者の高橋のぼるその人だった。熱狂的なファンに支えられ、現在も絶賛連載中の原作ではあるが、あえて映画を最終章に設定し「全編がクライマックス!」としてド派手にぶち上げることが出来れば、確かに前2作を超える怒涛の展開を生み出せるのではないか? と製作陣は思ったという。当時はまだ原作で描かれていなかった豪華客船のエピソードを、高橋自らが提示してくれたことも大きく、一気に『FINAL』は動き出す。

脚本はもちろん、『土竜の唄』1作目、2作目を手がけた宮藤官九郎。生田&三池監督とは何度もタッグを組み、2人をある意味で知り尽くしている宮藤だからこそのセリフ回しや、ぶっ飛んだ展開は本作でさらにエスカレート! お約束の玲二の裸シーンはさらに過激にバカバカしく、おなじみ【ジャスティストリオ】による“土竜の唄”がラップバージョンに進化(?)した他、主人公に「ファイナルって、やっぱりまた続編とか、ナシだかんね!」と言わせてしまう掟破りの発想や、最後の最後で唐突に“謎の巨大生物”を何の脈絡もなく登場させるなど、今回も宮藤ワールドが炸裂しまくる。原作の持つハチャメチャな面白さを、宮藤が存分に映画として膨らませ、そこに三池監督の斬新なアイディアがさらに加わる。出し惜しみ0! 予定調和、何それ? これぞFINAL! 最後の祭りにふさわしい激アツな脚本が完成した。

前作から5年の月日を微塵も感じさせない、細マッチョな肉体を惜しげもなくさらす生田斗真の姿は、もはや『土竜の唄』の美しい風物詩である。本作もクランクイン早々に、【ジャスティストリオ】との銭湯シーンで、見事な裸体を披露した生田。撮影合間にガウンを羽織り、【ジャスティストリオ】=吹越満、遠藤憲一、皆川猿時らと談笑する姿は何やらベテランの風格さえ漂う。そして毎回、生田とは別の意味で好きに暴れ放題の3人は、当然のように台本に書かれていない動きを足してくる。セリフ終わりにバスタオルできっちり隠していた乳首を大胆に見せつける皆川、一見クールに見えて急にハイテンションスイッチの入る吹越、生田の股間に時に涙を流しながら話しかけ続ける遠藤……。「なんだよ!」「な~に~!!」と全力の顔面演技を見せながらも、時折本気で笑ってしまいそうになるのを懸命にこらえる生田の心情は察するに余りある。ついにお披露目となった最新版“土竜の唄”=ラップバージョンでは、遠藤が絶妙にリズムを外しモニター前で生田も監督も大爆笑。3人のラップに合わせエキストラの高齢男性の方々も(裸で)タオルを振り回すというノリノリの熱演を見せ、「ここからはフリースタイルで!(笑)」という監督の熱い演出も飛び、現場はさながらライブ会場のような高揚感に包まれるのだった。

また皆さんお待ちかねの冒頭の“玲二裸シリーズ”は、今回はシチリア島の断崖絶壁に磔にされるという過酷さ! 撮影はグリーンバックで行われたが、当然生田は撮影時間のほとんどを前貼り1枚で過ごすことに。しかも体中にチーズを塗りたくられ、股間には花瓶がずっぽり。そこにシチリアの獰猛なカモメ達が、チーズをめがけて一斉に襲いかかる! 潔いほどのおバカ設定だが、この日も監督の熱血演出は冴えわたり、ついにはカモメ人形を監督自ら手に装着し、生田の乳首を執拗につつくという愉快なカオス状態に突入していく。『土竜』は監督はもちろん、スタッフもシャレがきいている。磔状態のままの生田の股間から花瓶を外し、前貼りを白色の絵筆で書き足していく作業中のスタッフに、生田が自らの股間を見下ろしながら「なんか、つばめの巣みたい」と一言。すかさず「高級食材ですね!」と返すスタッフ……グッジョブ!

生田を筆頭に、毎回オールスターキャストが揃うのも『土竜の唄』の大きな特徴。今や玲二とは本気の絆で結ばれているパピヨンこと日浦には堤真一、玲二の最愛の恋人・純奈に仲里依紗、裏社会のドン・轟周宝には岩城滉一といった面々は3作すべてに出演。また1作目に登場した玲二の宿敵・猫沢役の岡村隆史が久々の登場を果たす他、前作で玲二に黒歴史を刻まれた美しき殺し屋・胡蜂役の菜々緒も再登板。さらに本作で新たに参戦する強烈な新キャラが2人! 轟周宝の息子であり最凶のヒールキャラ・烈雄を演じる鈴木亮平と、轟周宝逮捕の全面指揮をとるやり手警察官の“サーモン”こと、沙門に滝沢カレンが扮する。原作者の高橋から「烈雄はオーラのある人にお願いしたい!」というリクエストがあり、どんなに個性的な役でも自分のものにしてしまう鈴木に白羽の矢が立つ。唯一無二の存在感を放つ烈雄は、原作ファンも納得のキャスティングとなった。同じく若くしてインターポール出身で麻薬捜査を取り仕切るというサーモンは、おおよそ普通の設定には収まり切らないキャラクター。誰もが認める美貌に加えバラエティ番組で独自の活躍を見せる滝沢は、女優としての経験値こそ高くはなかったが、製作陣の満場一致でのオファーに繋がった。
生田と鈴木は共演経験も非常に多く、公私ともに親しい間柄。だからこそ、生田の主演作シリーズのラストを飾る悪役として登場する鈴木は気合十分。裏社会の“百獣の王”を目指す烈雄を演じるにあたり、「本物のライオンの動画を見ながら気持ちを作りました(笑)」と言う鈴木は、撮影前に「うお~!」「あぁ~っ!」と雄叫びをあげ声のチューニングに余念がない。普段は至って温厚で人当たりも柔らかい鈴木だが、いざカメラの前に立つと獣のような咆哮と共に、生田と壮絶なアクションを繰り広げる。「亮平くんがバチバチに作り込んできてくれて嬉しかった。あのビジュアルが似合うのは、亮平くん以外いないんじゃないかな? ギリギリのアクションシーンはこれでまたひとつ、鈴木亮平という俳優と近くなれた瞬間だったかもしれないです」(生田)
玲二と烈雄のバトルはもちろんだが、烈雄VS胡蜂という裏社会で生きる2人のデスマッチも必見。体中にビリビリの電気ショックを食らいながらも胡蜂に近付き、まさかのキス(?)→感電という常人にはとうてい理解しがたい行動をとる烈雄の怪演に、現場も大盛り上がり。「烈雄にとっては、キスではなく食事です」と笑う鈴木に、菜々緒も渾身の昇天顔で応える。前作に続き、再び猛特訓を積んだという、菜々緒の巧みなムチ使いも健在。ロケ現場の外で「バチン!バチン!」と響く快音に、「何の音かと思ったら菜々緒さんがムチの練習している音で。殺される!と思いました(笑)」と生田もガクブル!?
また1作目以降続編への出演を熱望し、生田にも直談判をしていたという岡村は、今回念願の再登場。烈雄の企みによって玲二と即席のバディのような関係性を結ぶことになる猫沢の変貌ぶりにも注目したい。この2人のあるシーンでは、珍しく生田がNGを連発。初夏とは思えない猛烈な暑さの中、パスタの乾麺を蹴り上げるというアクションをこなしながら、長めのセリフを言わなければならなかった生田は、俗に言う“ハマる”という状態に。だがNGを出す度に「うわ~!ごめんなさい!」となぜか岡村をひしと抱きしめる。これには嫌な顔をするどころか、妙に嬉しそうな岡村が印象的だった。
初めての映画の現場に終始緊張しっぱなしだったという滝沢だが、全くそうは見えない堂々たる佇まいにはおそらく多くの映画ファンが驚くはず。みえみえのハニートラップを玲二に仕掛けるシーンでは、監督のセクシーな実演をそのまま体現。お茶の間では絶対に見られない妖艶な表情芝居&セクシーポーズは、確実に新境地開拓を思わせる。だが滝沢の目の前で繰り広げられた玲二とある人物の濃厚なキスシーンでは、笑いを我慢するのにかなり苦労したらしく「本当に危険なシーンでした!」と振り返っていた。

コロナ渦により撮影が1年延期になった本作。当初予定されていたイタリア籍の豪華客船でのロケは物理的にあきらめざるを得なくなったのだが、そこは数々の修羅場を潜り抜けてきた百戦錬磨の三池組。本物の船が使えないならばと、それを逆手に取った数々の突拍子もないアイディアを次々と生み出し、結果的にリアルな船の上では決して撮ることのできなかった大胆な演出を可能にしてみせた。その最たるものが、船上というテイでの水攻めシーン。リアルな船であれば甲板をあれだけ水浸しにするのはほぼ不可能であったが、グリーンバックでのスタジオ撮影であったため、10トンもの水を大量投入! 全身ずぶ濡れになりながら、決死の救出劇を体当たりでやり切った生田、仲の熱演は紛れもなく本物だ。三池組の高い熱量には堤も「こういう状況の中、いろんな創意工夫があり撮影までたどり着けた。役者もそうですが何より作り手側や監督の執念。“映画屋さん”達の熱い気持ちがすごく見えた作品ですね」と感慨深げに語っていた。

しかし水攻めよりもある意味で玲二を恐怖に陥れたのが、純奈の火鍋攻め。イタリアでの浮気がバレ、それまでのあま~いムードから一転。別人のようにガチギレする純奈は、グツグツ煮立った火鍋の中に玲二の携帯を躊躇なく沈める……だけでなく、火鍋スープをオタマですくい、玲二に何度も浴びせるのだ! 脚本では一度軽くスープをかけるだけだったのだが、現場で仲が突如「これ何回もかけていいですか?」と提案。結果二度三度とアツアツのスープをかけられることになった生田は、「これぞ仲里依紗のキレ芸!」と喜び(?)、現場は爆笑とリアルな火鍋のパンチの効いた香りに包まれた。仲にとっても純奈は約8年間演じ続けた最長記録のキャラクター。「純奈を演じるのもこれが最後なんだという寂しさはあります」と言いながらも、最後までサービスカット満載で全男子の憧れの純奈を笑顔で演じ切った。

クランクアップは生田、堤、岩城による本作のクライマックスシーン。激しい爆発を繰り返す船内の設定で、閑静な住宅地の中にある関東近郊のスタジオで撮影された。深夜にドッカンドッカンと本物の火を使った爆発シーンで終わるのもいかにも『土竜』らしいが(*もちろん近隣住民の皆さんの許可はとってありマス!)、この日の生田はいつになくシリアスモード。「シリーズが始まった頃の記憶やいろんな場面がフラッシュバックしてきちゃって、堤さんを見ているだけでウルウルしてくるものがありました」と語っていた生田の目には、その言葉通り熱い涙が……。全裸でカモメに乳首をつつかれていた男とは思えない切り替えこそが玲二の、そして生田斗真という役者の振り幅の魅力なのだと再確認するひと幕だった。
しかしそうしている間にもすごい勢いで燃え上がり続ける炎に、「何か燃えちゃってない?」と笑顔の堤。その堤が放った銃撃の予想以上の爆発音にカットがかかった瞬間、「び、びっくりした~!」とやはり笑顔の生田と岩城。最後まで男くさく全力で燃え尽きた彼らの姿は、まさかの【土竜で泣けるなんて!】という感動と共に熱くスクリーンに焼きついている。
「やはりFINALですからね。やり残したこと、後悔することがないように。それは自分だけじゃなくスタッフも役者も同じです。特に玲二は玲二なりに自分で決着を付けるという大事な仕事があるし、それが作品全体にも繋がっていく。そういう意味では1、2作目とは全然違う現場でした。映画のラストシーンは“これが玲二らしさだよな”と僕は思っています」(監督)

【撮影:2021年5月4日(火)〜6月11日(金)】

三池
僕の役割としては「ちゃんと終わらせる」ということ。『1』『2』を好きで観てくれていた人達が「ああ、本当に終わったんだ」と思えるもの……逆に言うと生田斗真ファンからすると「終わらなきゃいいのに!」と思えるものにしないといけない。スタッフ、役者含めてやり残したこと、後悔がないようにすること。特に玲二は自分なりの決着をつけるという大事な仕事があって、それが作品全体にも繋がるという意味では、『1』『2』とは全然違う現場でした。
生田
前作を終えた時から、『土竜の唄』と玲二に決着をつけたいという思いは僕の中でずっとあったので、それが実現できてよかったなと思います。やり残すことのないように全部ぶつけよう!と思いつつ、予告篇でも使われているけど「本当に最後だからね?」って言ってる感じが『土竜』っぽくていいなと(笑)。何が起きてもおかしくない感じ、何かを期待させてくれる映画に成長させてもらえたのはすごく嬉しいことですね。
宮藤
これで終わりってことは、玲二の土竜としての任務が終わるということなので、それをパピヨンに伝えないといけないってこと。そこをしっかり描かないといけないというのがはっきりと決まっていたので、逆に言うと他はいつも通り……いや、いつも以上に『土竜』の世界観で貫いた方がいいんだろうなと思いました。まさかの原作より映画が先に終わってしまうわけなので、(原作者の高橋先生に)「これでいいですかね?」という思いもありつつ、そこは逃げずにうまくいったんじゃないかなぁと。正直1作目から毎回FINALの気持ちで本は書いてますけど、これが本当のFINALなのでなんとなく「ただでは終われないよね」ってムードは最初からずっとありましたね(笑)。
生田
誰も3作も続くとは思ってなかったですよね!

生田
もはや当たり前のように前貼りを自分でつけて、スタッフさんに呼ばれると「は~い」ってそのままの姿で現場に入っていましたね……。女性のスタッフさんも「きゃ~!」みたいなリアクションも一切なく。ただ今回は監督にカモメの人形で乳首をついばまれて!
三池
やっぱり生田斗真の乳首は俺がつまむべきでしょう。他の人には譲れないです。
生田宮藤
アハハ!(笑)
生田
『2』で虎に頭を噛まれて落下していくシーンがあったんですけど、虎の爪がズボンに引っかかってずるずるっと脱げるんです。あの時の虎の手も監督が自らやられていたんですよね。重要なところ(?)は全部監督が毎回やられています。
三池
重要……なのかな。だってああいうシーンって、他のスタッフに「やって」って言っても、どういう気持ちでやるのかなって(笑)。でも乳首はいい感じでしたよ。
生田
いい感じって!(笑)
三池
手から伝わるんだよね。優しい男なんだなって(笑)。あのカモメ人形は記念に持って帰りました。
宮藤
僕は脚本を書いてから完成作を観るまで時間が結構空くので、毎回「ずっと裸じゃん!」ってビックリしますね。「裸の人が裸のシーンを回想してる!」って(笑)。

生田
成長っていうのは自分では分からないですけど、確実に“男にしてもらった”感はありますね。『土竜の唄』が僕の俳優人生において大きなターニングポイントになったのは確かです。それがいい方向にいったのか悪い方向にいったのかは、さておき!玲二に出会ってなかったら、もっとアーティスティックな俳優になっていた可能性もある(笑)。
生田宮藤
(笑)。
生田
でも菊川玲二っていう男に、皆が夢を乗せている感じはずっとあって。自分じゃ突破できないことも、アイツ=玲二ならやってくれるんじゃないか?っていう。そういう皆の夢を乗せて玲二として走り続けられたっていう感覚はありますし、やっぱり大好きな役ですね。
三池
玲二自身は成長はしてないから、生田さんが役者として成長しているのを盛り込み過ぎるのもどうなんだろう?っていうところがあるんですよね。
生田
うんうん。
三池
「菊川玲二の芝居が上手になったよね」じゃなくて、生田さんの役に対する愛情や想いがどんどん増幅している。普通だと3回目ともなると慣れてきて、「まあこういう感じでOKでしょう」ってなるところが、毎回完全燃焼でやり切ったな!っていう。その印象は『1』から変わらないし、もちろん生田さん自身は役者として成長しているんだろうけど、この作品に関しては玲二として必要なところだけ生かすという大変なことをやってくれたなと思っています。
宮藤
そうですね。(役者としての)成長は他の作品でしてもらって……。
生田
アハハ!
宮藤
“成長しない”ことが備わっているのが玲二のキャラクターだし、最初から全くぶれてないんですよね。土竜をやってるのに毎回騙されるし、毎回「これで最後だからね」って言ってるし、「さすがにこれはバレるだろう」と思ってもバレない。なんかもう夢の国なんですよ(笑)。でも3作を通して観てみると、いろんなゲストの人が来た時に『土竜』の世界観をちゃんと作ったうえで新しい人達を迎えているのが生田さんだし、そこの座長感はすごく感じました。
生田
正直今はまだ「終わった」感じがしてないですけど、この映画は嫌なことを全部吹き飛ばしてくれるお祭りみたいな映画なんで、是非たくさんの方に観ていただけると嬉しいです。もしかすると最後は謎に泣けちゃうかもしれません!?